はれときどきくもり

人生晴れた日もあれば曇った日もある。いい時も悪い時も人生を楽しもう。

タスククエスト ー冒険の準備はチェックリストでー

: 2012年6月20日

第一話

 


photo credit: PAKUTASO
 

「これからどうする?」
王様の元を辞したわたしたちは、アーレン城から町へと向かって歩いていた。
その道すがら、わたしは幼なじみの彼女に尋ねた。
伝説のタスク管理ツールを探す冒険の旅に出る、と言ってもどうしたものかさっぱり分からない。
 

「どうって、お母さんから聞いてないの?」
彼女の言葉に首を傾げると、彼女は呆れ顔で答えた。
「まったく、としは変なところで几帳面なくせに、肝心な所は抜けてるんだから。
成人の儀式の前に、親から冒険の基礎知識を教えてもらうのが習わしでしょ。」
 

そう言われると…。
わたしは昨晩のことを思い出した。
確か母さんが_冒険の旅は大変だから、○○を××して、それから□が△よ_ということを言っていたような気がする。
…ダメだ。冒険で頭がいっぱいで、肝心の部分がまったく思い出せない。
 

頭をふってふと我に返ると、やっぱり覚えてないのね、という顔で彼女がこちらを見ている。
 

わたしは見栄を張って当てずっぽうに答えた。
「もちろん覚えているさ。
まずは、武器防具だろ、それから回復系の道具だろ、最後は食料だ。」
 

彼女は、なおもやれやれという顔で、こちらを見ている。
むむ?他に何かあるのか?
冒険の始めと言えば、たけやりと旅人の服というのがお約束じゃないのか。
いや、もしかしてこんぼうだったかな?
 

「一番大切なものを忘れているわよ。
ペンと手帳よ!」
彼女は得意気に言い放った。
 


photo credit: PAKUTASO
 

ペンと手帳だって!
そんなもの冒険の旅で何に使うんだ?
まさか、ポケ○ンみたいに、魔物が現れるたびにスケッチして、図鑑ゲットだぜ、とか言うんじゃないだろうな?
 

というわたしの考えが顔にでていたのだろうか。
彼女は、日が射して暖かくなってきた春の空気をあっという間に真冬に戻すような冷たい視線を送ってきた。
彼女はきっと氷系魔法の使い手に違いない!
 

「ペンと手帳はとても大切なのよ。
とし。あなたは、お母さんから聞いた【冒険の準備に必要なもの】を、すっかり忘れていたでしょう。」
 

「すっかりではないけどな。」
というわたしのつぶやきは、滝のように流れでる彼女の言葉にあっという間にかき消された。
水系魔法も得意なのか!?
 

そんなわたしをよそに、彼女はとうとうと語り続ける。
「だからね、そんな時のために、ペンと手帳が必要なのよ。
お母さんから聞いた内容をメモしておけば、それは立派なチェックリストになるでしょ。」
 

チェックリスト?
 

初めて聞く言葉に戸惑い、首を傾げていると、彼女が話を続けた。
「そう、チェックするためのリストよ。
例えば、冒険の旅の準備をするときに、すべきことや必要なものを漏らさず書いておくの。
そうすれば、あとはリストを見ながら準備をして、終わったらチェックするだけだから簡単でしょ。」
 

なるほど、とわたしは納得する一方で、素朴な疑問を口にした。
「でも、わざわざ手帳に書かなくても、それくらい覚えられるだろう。」
 

彼女はうんうんと頷きながら空を見上げた。
彼女が頭の中で考えをまとめている時の癖だ。
 

しばらくして、またわたしのほうを向いて、ゆっくりと話し始めた。
「確かにそうね。
実を言うとわたしも、どこまでをチェックリストに登録するべきか、まだ解らないの。それはこれから一緒に答えを探していきましょう。
でもね、たとえ覚えられるようなことでも、手帳にチェックリストを作ることの利点はあるのよ。」
 

と言うと、彼女はしゃがみこんで、指で地面にすらすらと書いた。
 

1.忘れない
2.間違えない
3.頭を使わないから作業が早い。
4.再現できる。

 

彼女は手をぱんぱんとはたいて土を落としながら立ち上がり、地面の文字を指差して説明を始めた。
「【1.忘れない】は分かりやすいわね。
としのお母さんもお買い物に行くときは、何を買うか紙に書いて持って行くでしょ?
そうすれば、お家に着いてごはんを作り始めてから、塩がないわ、なんて言わなくてすむものね。」
 

なんで彼女は昨晩の我が家の会話を知ってるんだ、わたしはそう考えながら頷いた。
 

そんなわたしの思考を見抜いているのか、彼女は少しにやりとして続けた。
「【2.間違えない】は【1.忘れない】と似てるけど少し違うの。
何かをするときに、順序って大事よね?
ごはんを炊くときには、お米を洗ってから、お鍋に入れて、火をつけるでしょ。
先に火をつけて、お米を洗って、ぐつぐつ煮えたお鍋に入れたら、お粥みたいになっちゃうよね。」
 

何で彼女は昨晩の我が家のメニューを知っているんだ。
あのお粥はなかなかクリーミーでうす味だった、わたしはそう考えながら頷いた。
 

やはり彼女はにやりとして続けた。
「【3.頭を使わないから作業が早い】と【4.再現できる】は説明するより実際にやってみたほうが実感できるから、あとにしましょう。」
 

そう締めくくると、彼女はにっこり笑った。
そして、クルリと後ろを向くと、スタスタと町に向かって歩き出した。
 

わたしは続きが気になったが、こういう時の彼女は、聞いても絶対教えてくれないのだ。
なにしろ二十年来のつきあいだから、彼女のことはよく分かっている。
途中で切り上げられた話に後ろ髪を引かれながらも、さっさと町に向かって歩いていく彼女を、わたしは追いかけて行った。
 

解説

無事に第一話を始めることができました。
序章を読んで、声援をくださったあなたに感謝します。
 

さて、今回より二人は、冒険の旅に出る準備をします。
準備をするに当たって、幼なじみの彼女よりチェックリストを作ろうと提案が出ました。
 

彼女があげたチェックリストの有用性は、すでにチェックリストをお使いの方はよくご存知だと思います。
 

わたしは最近になってその良さを実感することがありました。
その詳細は、と尋ねられそうですが、今回はわたしも彼女と同じように、またあとでね、とにっこり笑って答えます。
 

もったいぶっているわけではないのですが、彼女の説明のあとの方が分かりやすいので、しばらくお待ちください。
 

今は、作業をする前にチェックリストを作るといいことありそうだな、くらいに考えておいてください。
 

この連載をお読みのあなたにとって、そんなこと知ってるよ、とか、それは変だよ、ということが多々あるでしょう。
しかし、二人は冒険に出る前のひよっこで、スラ○ムにも負けるような状態です。
これから徐々にレベルアップしていくので、暖かい目で見守ってあげてください。
 

また、こんないい方法もあるよ、というご意見がありましたら、わたし(@toshi586014)宛にお知らせください。

それでは、次回またお会いできることを、楽しみにしています。
 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。
 

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