はれときどきくもり

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タスククエスト ーチェックリスト・おぼえていますかー

: 2012年7月30日

第九話


わたしは幼なじみの彼女と草原を歩いていた。
はるか後方には、大きな城門とそれを取り巻く城壁が見える。
堅牢なその姿は、あらゆる物を拒否しているかのようであった。

わたしの脳裏に一瞬、二度と戻れないのでは、という考えがよぎった。
しかし、わたしは頭を振ってその考えをふりほどいた。
出発する時の母さんの笑顔を思い出し、必ずここに帰ってくるぞ、と心に誓った。

「勢いよく出てきたのはいいけど、これからどこに行こうか?」
わたしは気分を切り替え、のんびりと幼なじみの彼女に尋ねた。

ジロリ。

彼女は、すごい形相でにらんできた。
いかん、目を合わせると呪われる!
わたしは彼女から目をそらして、下手くそな口笛を吹きながら、前方に広がる草原を眺めた。

「王様の話しを覚えてないの?
タスクカフェを探すように言われたでしょ!」
彼女はさらに鬼のような形相でにらんだ。

わたしは呪い殺される前に、必死で王様との会見を思い出していた。
タスクカフェ…、タスクカフェ…、…!

思い出した!
王様が、タスク管理マスターたちが集まるって言ってたアレだ!

わたしはなるべく平静を装いながら、彼女に向かって言った。
「もちろん覚えているさ。
タスク管理マスターたちが集まる場所だろ?
ほら、この話↓で出てるじゃないか。」

タスク管理初心者よ。いざ、わたしと共に冒険の旅へ。その名もタスククエスト! | はれときどきくもり

「莫迦っ!
そういう舞台裏を晒したらダメって、その時も言ったでしょ!」
彼女はさらに恐ろしい顔で睨んできた。

もしかして、彼女が伝説の魔王なのでは?
わたしは若干の疑念を胸に抱きつつ、彼女の呪いの届かない範囲へ逃れるために走った。

「あ!待って!そっちはダメ!」
彼女が真剣な顔で叫んだ。

なんだ、突然。
と、思ったのも束の間、草むらがガサガサ揺れたかと思うと、何かが飛び出してきた!

鼻を突く独特の匂い。
そして、あたりに漂う怪しげな気配。
一瞬、眩暈に似た感覚があり、そのあと、世界がぐにゃりと回転するのを見た。

眩暈が治まると、目の前には魔物が一匹現れていた!

子どもの頭くらいの大きさで、涙を一粒落としたような形をしている。
ぽよぽよとした濃いめの水色の体に、大きな丸い目と、笑っているような口がある。

これが噂のスライムか!?

彼女に無理矢理連れて行かれた、王宮図書館にあった『大魔物図鑑』の最初に載っていた魔物だ。
絵で見ると愛嬌もあったが、間近で見ると、目が笑っていないのが怖い…。

「とし!気をつけて!」
彼女の叫び声で我に返ったわたしは、急いで戦闘モードに頭を切り替えた。

冒険の旅に出ると決めて以来、わたしは彼女とともに、王宮守備隊に訓練に行っていた。
そこでは、冒険の旅をやむなく断念した先輩冒険者も指導者として配備されていて、実戦さながらの特訓が繰り広げられていた。

戦闘の心得は…。

そうだ、まずは状況確認だな。
わたしは、目の前のスライムに注意を配りつつ、素早く周りを見回した。
ふむ、今のところは、周りに魔物の気配はない。
そして、彼女はわたしの後方約五歩の距離にいる。

次は…、装備の確認だ。
わたしは、たけやりを背中の槍袋から素早く抜き取って構えた。
そして、腰につけた小袋に、薬草と毒消し草が入っていることを頭に刻みこんだ。

次は…、魔物の分析だ。
スライムは_わたしは『大魔物図鑑』のスライムのページを思い出していた_それほど強くない。
ぽよぽよとした体なので、打撃は効果が薄く、鋭利な刃物などでの刺撃が有効。
魔法や飛び道具は使わないが、群れていることがあるので、注意が必要。

最後は…、パーティーの戦略確認だ。
わたしは、ちらと彼女を振り返った。
彼女はすでに銅の剣を構え、こちらに走り始めていた。
わたしと目が合うと、軽くウインクをした。
『ガンガン行こうぜ!』の合図だ!

その瞬間に気配を感じて、わたしは素早く体を屈めた。
わたしの髪の毛をかすめて、小さい固まりが彼女の方向に飛んでいった。

わたしが体勢を整えつつ、後ろを振り返ると同時に、彼女が銅の剣でスライムをたたき落としていた。

スライムは少しダメージを受けたようだが、わたしと彼女の真ん中あたりに着地し、ぽよんぽよんと飛び跳ねていた。

彼女がわたしに視線を送る。
わたしは軽く頷いて、たけやりを握る手に力を込めた。

「やっ!」
スライムが着地するタイミングに合わせて、わたしは掛け声とともに一足飛びに間合いを詰めた。
そして、上からスライムの口を狙って、たけやりを一直線に突き出した。

たけやりがスライムをとらえかけたその刹那、スライムが高くジャンプした。
勢い余って、たけやりが地面にざっくりと刺さった。

「うおぉーー!」
その瞬間を狙って、彼女が銅の剣を水平に構えて、スライムに向かってまっすぐ突き立てた。

ずりゅん

銅の剣が、何とも言えない音とともに、スライムの体を貫く。
スライムは、一瞬ビクッとしたが、無表情な顔のまま動かなくなった。

彼女が銅の剣をぶんっと振ると、スライムはずるりと抜け落ちた。
そして、地面に落ちてぽよんと転がったと思うと、どろりと溶けて地面に吸い込まれていった。

スライムが溶けた場所に、きらりと光るものが落ちていた。
わたしが近づいて手に取ろうとすると、横から彼女の手が伸びてきて、さっと拾った。

「あら、あのスライム、お金を持ってたのね。
どれどれ、ふーん、2プラチナか。
まあ、スライムだったらこのくらいよね。」
彼女は、わたしに向かってお金を見せながら言った。

「前から疑問だったんだけど、なんで魔物たちがお金なんて持ってるんだ?」
わたしは思いついて、ふと尋ねた。

彼女は、ふふんと意地の悪そうな顔をして答えた。
「それを知ったら、このお金を拾えなくなると思うわよ。
それでもよければ教えるけど、どうする?」

彼女の顔を見ていると、恐ろしい想像が頭に浮かんできたので、わたしは首を振った。

「じゃあ、このお金は半分こね。」
と言うと、彼女はわたしに向かって1プラチナ硬貨を放り投げた。

わたしが硬貨を受け取り、袋にしまっていると、彼女が尋ねてきた。
「初めての実戦にしては落ち着いてたわね。
戦闘開始の準備も素早くできてたし、どうやったの?」

わたしは、先ほどの戦闘を思い出しながら、ぽつりぽつりと話しだした。
「うーん、そうだな。
とっさに王宮守備隊での特訓を思い出して、戦闘の心得を一つずつ確認していったんだ。
まずは状況確認、次に装備の確認…、といった具合に。
そうすると、次第に心が静かになって、戦闘に集中できたんだ。」

彼女は感心したように、ピューと口笛を吹いた。
「なるほどね。
としの中には戦闘の心得が、心のチェックリストとして定着しているのね。」

「心のチェックリスト?」
わたしは初めて聞く言葉を繰り返した。

彼女は、周囲を見回して、魔物の気配がないことを確認しながら話を続けた。
「そうよ。
冒険の旅の準備の時は、初めてのことだったので、チェックリストを紙に書いて、それに沿って作業をしたよね。
でも、さっきの戦闘の時は、紙じゃなくて、としの心の中にある戦闘の心得に沿って戦ったんでしょ?」

わたしは頷きながら答えた。
「確かにそうだな。」

「それはね、何度も繰り返した訓練のおかげで、習慣として身についてるってことよ。
つまり、その習慣化したものが心のチェックリストなの。」
彼女は、親指で自分の胸元をトントンと叩きながら言った。

さらに、彼女の話は続く。
「そこまでくれば、作業をするときにチェックリストがなくてもできるわ。
でもね、レビューをして改善するために、あとからでも良いので記録は残した方がいいわよ。
さて、あんまりこんな所で長話も危険だから、そろそろ行きましょうか。
まずは、初戦闘の勝利おめでとう!」

彼女は片手を高く掲げて、手のひらを大きく広げた。
わたしも彼女に倣って片手を掲げ、自分の手のひらで彼女の手のひらを叩き、ハイタッチをした。
パァン、と響く小気味良い音が、わたしたちの冒険の旅の門出を祝福しているようだ。

彼女は、手に持った銅の剣を腰に挿しながら言った。
「もうすぐ日が暮れてしまうわ。
まずは、野営地を探しましょう。」

夕日で金色に染まる草原の中を、彼女は歩き始めた。
腰に挿した赤い銅の剣が、夕日を受けて真っ赤に燃えているようだ。
その眩しい姿を眺めていると、彼女となら厳しい冒険の旅も乗り越えられる、と思い、わたしは彼女の後を追って歩き出した。

解説

第九話を読んでくださって、ありがとうございます。

さて、今回は初めての戦闘でした!
冒険の旅と言えば、やっぱり戦闘は欠かせません。
今回は、二人で力を合わせて無事に乗り越えましたが、これからたくさんの強敵が待ち受けていることでしょう。
ドキドキしますね。

そして、今回のテーマは、心のチェックリスト=習慣化です。

タスク管理をするときに、どこまでリスト化するのか?ということが話題になります。
理想を言えば、もれなくリスト化する、が答えだと思います。
しかし、リストを作ったり、メンテナンスすることは、時間がかかるし大変です。

個人的には、幼なじみの彼女が言う「心のチェックリスト」に入っていることは、リスト化しなくてもいいかと思います。
ただし、レビューで確認するために、ざっくりとでもいいので、記録は残すことをオススメします。

例えば、今回の戦闘だと、次のような感じです。

○月○日○時○分〜○分
スライム一匹と戦った。
2プラチナ獲得した。

途中経過がなくても、このくらいの情報があれば、充分に思い出せるでしょう。

もし、特に重点的に確認したいことがあれば、そのことは記入しておいてください。
例えば、魔物との相性を分析したいのであれば、誰が倒したという情報を記入しておくと役に立つでしょう。

そして、リスト化する時は、「何のためにリストを作るんだっけ?」と自分に問いかけながら作ってみてください。

いつも応援してくださるあなたに、心より感謝します。

また、こんないい方法もあるよ、というご意見がありましたら、わたし(@toshi586014)宛にお知らせください。
もちろん、ストーリーに関するご感想も大歓迎です。

それでは、次回またお会いできることを、楽しみにしています。

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

【前回のお話】

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