はれときどきくもり

人生晴れた日もあれば曇った日もある。いい時も悪い時も人生を楽しもう。

タスククエスト ーリマインドを制するものはタスクを制すー

: 2012年7月17日

第七話

 


 

夜がやってきた。
今日も魔物たちの夜がやってきた。
 

町もアーレン城も静まり返っていた。
人々は皆、建物の中で、ひっそりと朝まで過ごすのだ。
 

静かな夜の世界に、時折怪しげな鳴き声が響き渡る。
そして、魔物たちが蠢く奇怪な物音_ネバネバした何かが地面を這いずり回る音、獣のような何かが素早く木々の隙間を走り抜ける音、鳥とは異なるおぞましい羽音_が、さらに人々の空想を刺激し、皆恐怖におののいた。
 

魔物たちは、目がほとんど利かず、匂いをかいで人間に襲いかかってくる。
そのため、宰相カイーゼがデービッド王に進言し、城と町の周りに高い城壁を張り巡らせ、城壁の上で松明を燃やし続けている。
松明の火による上昇気流で、人間の匂いを上に逃し、魔物たちが近づいてくるのを防いでいた。
まるで、煌々と輝く松明の明かりで夜の闇を払えば、魔物たちを消してしまえると信じているかのように。
アーレン城が不夜城と呼ばれる所以だ。
 

しかし、夜は空を飛ぶ魔物たちが活動を始める。
まれに、空から魔物が城壁の中に紛れこんで来ることがある。
そのため、夜中はなるべく家を密封して、匂いが外に洩れないよう、ひっそりと過ごすのだ。
 

その様は、春になるまで土の中でじっと待つ蛙のようだ。
蛙たちは、鳥の気まぐれによって掘り返され、食べられることのないように、ただ祈りながら春が来るのを待つ。
そして、春が来ると土の中からわらわらと姿を現し、いつも通りの日常を繰り返す。
 


 

わたしは、幼なじみの彼女と夜の支度を終えて、広間で静かに座っていた。
 

なるべく外へ匂いが洩れないように、家の間取りは回の字のように、二重構造になっている。
外側の四角い部分には、食卓や台所など昼間の生活の場がある。
中の四角い部分に寝室があり、夜はここで過ごす。
 

夕方になると、外につながる窓や扉の隙間を、チ・クタンという名前の粘土状のもので塞ぐ。
チ・クタンは松明の燃えかすを、特殊な樹脂で固めたものだ。
チ・クタンの中は、とても細かい穴があいていて、空気は通すが匂いの粒子は通さないのだ。
 

「ふう、何とか間に合ったな。」
わたしは、汗を拭いながら言った。
 

「良かったわね。」
そんなわたしを見ながら、母さんがにっこり笑って言った。
 

わたしは、そんな母さんの呑気さにややあきれながら、少しとげを含んだ口調で言った。
「日が暮れかけてるなら、呼んでくれればいいのに。
危うく間に合わないところだったよ。」
 

「あら、二人きりの時間を、邪魔しちゃ悪いと思って。
それとも、何回ものぞいた方が良かったかしら?」
母さんが、すました顔で答えた。
 

「なっ!何を言ってるんだよ!」
わたしは、ドギマギしながら大きな声を出した。
 

「くっくっく。」
幼なじみの彼女が、そんなわたしたちの様子を見ながら、含み笑いをする。
 

「ねー!
理解のある母親だと思うでしょ?」
母さんは、幼なじみの彼女に向かって、にっこりと笑った。
 

「はい、そうですね。お母さん。」
幼なじみの彼女は、笑いをこらえながら答えた。
 

「あら、お母さんだなんて、恥ずかしいわ。至らない息子だけど、よろしくね。」
母さんは頬を赤らめながら、嬉しそうに答えた。
 

「ちょっと、まったー!」
わたしは、あまりの展開に、ねる○ん並みにベタなツッコミをしてしまった。
 

「ふふふ、冗談よ。ねー。」
「ねー。」
母さんと幼なじみの彼女が、顔を見合わせて笑った。
 

なんなんだ、この『ガンガン行こうぜ!』なコンビネーションプレイは?
いっそのこと、二人で冒険の旅に出たほうがいいんじゃないのか?
 

幼なじみの彼女とのパーティーを解消しようかと真剣に悩んでいると、彼女が突然わたしに向かって言った。
「ねえ、とし。
こんなときにはどうすれば良かったと思う?」
 

「え?」
さっきからの唐突な展開に頭が混乱して、わたしは呆然とした顔で聞き返した。
 

「さっきみたいに、やるべきことを忘れると、大変な目に遭うでしょ。
そうならないために、どうすれば良かったと思う?」
わたしはよほど変な顔をしていたのだろう。
幼なじみの彼女は、また含み笑いをしながら、再度わたしに尋ねた。
 

「うーん、そうだなあ。
忘れちゃいけないんだから、常にそのことを考えておくとか?」
わたしは、頭をひねりながら答えた。
 

彼女はうんうんと頷きながら天井を見上げ_彼女が頭の中で考えをまとめている時の癖だ_しばらくしてから、ゆっくり話しだした。
「それも一つの手ね。
でも、あれだけ議論が盛り上がっていると、つい忘れちゃうわよね?
実際に、二人ともすっかり忘れていたわけだし。
だからね、自分たちで覚えられないなら、自分たち以外を頼るのよ。」
 

わたしは、キョロキョロと周りを見回して言った。
「母さんにお願いするってことか?」
 

彼女は、首を振りながら答えた。
「いいえ、人間だと忘れることがあるから、人間以外にお願いするの。」
 

「まさか、魔物じゃないよな!?」
わたしが素っ頓狂な声をあげると、幼なじみの彼女は、まさかという顔をした。
そして、麻袋から小さな瓶のようなものを取り出して置いた。
「これよ。
これはね、リマインダーと呼ばれるアイテムよ。」
 


photo credit: PAKUTASO
 

「璃魔隠堕ー?
呪われてそうな名前だな。」
わたしは訝しみながら、そのアイテムを眺めた。
 

「リマインダーよ。
簡単に言うと、決められた時間が経過すると、お知らせしてくれるアイテムなの。」
幼なじみの彼女は、指で空中に『リマインダー』と書きながら説明した。
 

見た感じは、少し大きな_拳二つ分ほどの_砂時計だ。
木でできた枠の中に、真ん中がくびれた透明なガラス容器がはめ込まれていた。
そして、くびれた部分には、小さな水車のような歯車がついていて、歯車から出た棒がガラスにあいた穴を通って外につながっている。
棒の先には、さらに歯車などの小さい部品がついている。
どうやら、砂が落ちる時に、歯車を回すことで棒が回転し、それによって外の仕掛けが動くようだ。
 

「例えば、今から一分後に寝床の準備をしたい、とするでしょ。
そんな時に、このリマインダーに登録するの。」
幼なじみの彼女は、リマインダーを手にとって、仕掛けの部品をキリキリと回し始めた。
そして、木枠の天辺に埋め込まれた光る石に向かってボソボソと囁くと、光る石をはずして七色に輝く砂をサラサラと入れた。
七色に輝く砂が、ガラス容器にどんどんたまり、一番下の目盛りまでくると、光る石を再びはめ込んで、クイッと回した。
すると、ガラス容器のくびれにある歯車が回転し、七色に輝く砂が下の容器に向かってサラサラと落ち始めた。
 

わたしは、七色の砂がキラキラと光りながら落ちていく様子を、ぼんやりと眺めていた。
そろそろ一分が経とうかという頃、幼なじみの彼女が、ニヤニヤしながらわたしに向かって言った。
「もうすぐよ。」
 

まさにその瞬間、リマインダーの砂が落ちきって、天辺の光る石から幼なじみの彼女の声が聞こえた。
「とし、そろそろわたしたちの寝床を用意してほしいな~。」
 

その甘えるような声を聞いて、わたしは耳まで真っ赤になった。
「ま、また、そんないたずらをしやがって!
うら若い乙女が、何を考えてんだ!」
 

幼なじみの彼女は、そんなわたしの様子を見て、満足気に言った。
「ふふふ、冗談よ、ジョーダン。
でも、リマインダーの使い方は分かったでしょ。
人間の記憶は曖昧で、すぐに忘れてしまうのよ。
それに、覚えておこうとすることは、意外に頭に負担になるの。
だから、リマインダーに登録して、思い切って忘れてしまうのよ。
そうすれば頭がすっきりして他のことに集中できるし、リマインダーが知らせてくれるから忘れないし、一石二鳥よ。」
 

わたしは、先ほどのショックも忘れて頷いていた。
リマインダーか、なるほど便利なものだ。
 

わたしが真剣に考えていると、母さんがまるでお祝いの席の挨拶のように、陽気な声で言った。
「さあ、お話が終わったら、早く寝ましょう。
あなたたち、明日からは冒険の旅に出るんだから、今日は早く寝なさい。
明日は、母さん特製のお弁当を作ってあげるわね。」
 

続いて、幼なじみの彼女が陽気な声で答えた。
「わー、嬉しい!
わたし、お母さんのお弁当大好きなの。」
 

この緊張感のなさは何なんだろう?
わたしは、ため息をつきながらやれやれと頭を振った。
しかし、明日からの厳しい日々を想像すると、くつろげるのも今のうちかと思い、二人に続いて寝床の用意を始めた。
 

明日からは、いよいよ冒険の旅の始まりだ!
 

解説

第七話を読んでくださって、ありがとうございます。
 

さて、今回はリマインダーが登場しました!(決して『璃魔隠堕ー』ではありません。)
わたしは、鳥頭と言われるくらいすぐに忘れるので、リマインダーは手放せません。
今はiPhoneアプリのDueを使っています。このアプリは、終わったと言うまでしつこくしつこくアラームを鳴らしてくれるので、鳥頭のわたしにぴったりです。
わたしのリマインダーの使い方は、この↓記事にまとめているので、ご覧ください。
 

一緒に夢を見つけませんか?一日一個夢ノート作り(登録編) | はれときどきくもり

 

iPhoneアプリDueとHappynoteを使って、ポジティブ思考を習慣化しよう【設定編】 | はれときどきくもり

 

幼なじみの彼女が言うように、「覚えておこうとすることは、意外に頭に負担なの」です。
ですので、iPhoneをお使いなら、標準の時計アプリでもよいので、一度リマインダーをお試しください。
とてもすっきりした気持ちで、作業に集中できます。
 

早いもので、今回で七話目となりました。
準備に時間がかかっていましたが、ようやく次回からは、冒険の旅に出ます!
ここまでたどり着けたのも、タスククエストを読んでくださるあなた、そして、応援してくださるあなたの暖かい気持ちのたまものです。
 

これから、としと幼なじみの彼女には、過酷な状況が待ちかまえていることでしょう。
そんな二人が無事に冒険の旅を続けられるよう、変わらず見守ってあげてください。
 

いつも応援してくださるあなたに、心より感謝します。
 

また、こんないい方法もあるよ、というご意見がありましたら、わたし(@toshi586014)宛にお知らせください。
もちろん、ストーリーに関するご感想も大歓迎です。
 

それでは、次回またお会いできることを、楽しみにしています。
 

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。
 

今回の解説で紹介したアプリはこちら↓です。
 

Due 〜 リマインダー、タイマー、アラーム 1.8.3(¥450)

カテゴリ: 仕事効率化, ユーティリティ
現在の価格: ¥450(サイズ: 22.4 MB)
販売元: Phocus LLP – Phocus LLP
リリース日: 2010/09/15
現在のバージョンの評価: (18件の評価)
全てのバージョンの評価: (164件の評価)
App + iPhone/iPadの両方に対応


 

【前回のお話】
タスククエスト ー記録は記憶よりも強しー | はれときどきくもり

 

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タスククエスト ーチェックリストはかく語りきー | はれときどきくもり

 

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タスククエスト ーリマインドを制するものはタスクを制すー」への6件のフィードバック

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  5. […] 「これはある種の魔法のアイテムなんだ。リマインダーに使われている魔法石があるだろう? あれと同じように、魔力を蓄積することができる。そして、もうひとつ『大切なもの』を蓄積することができるんだ」 […]

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