はれときどきくもり

人生晴れた日もあれば曇った日もある。いい時も悪い時も人生を楽しもう。

タスククエスト ーぼくと契約してタスク管理マスターに…?ー

: 2012年8月7日

第十話



photo credit: PAKUTASO

パチパチ…。
暗闇の中に輝く焚き火から、薪がはぜる音が聞こえた。

わたしは、幼なじみの彼女と、草原で野営していた。

魔物がどこから襲ってきても気づくように、見通しの良い広場に居住用テントを張った。
そして、居住用テントの周りには、ジャブロと呼ばれる簡易防壁を張り巡らせた。
防壁といっても、とても軽くて薄い布_反対側が透けて見えるくらいの_で作られた、とても大きなテントだ。
しかし、匂いの拡散を押さえるフスキー粉が練り込まれているので、匂いで襲ってくる魔物に対しては、重要な防壁だった。

わたしは、居住用テントの横に座り、焚き火の明かりが照らすジャブロの向こう側を警戒していた。

夜の草原はとても静かで物音一つしないのだろう、と思っていたが、そんなことはなかった。
風で揺れる草たちのざわめきや、虫や鳥たちの鳴き声…。
そして、時折遠くから聞こえる、おそらく魔物の蠢く音…。

わたしは、様々な音が繰り広げる協奏曲に耳を澄ましながら、今日の戦闘を思い出していた。

心のチェックリストか…。

彼女は、習慣化したことは心のチェックリストとして胸に刻み込まれているから、リスト化は不要だと言った。
でも、朝起きてから夜寝るまでの行動は、ほとんど習慣化しているモノばかりだ。
つまり、リスト化は必要ないってことなのか?

ガサガサ

わたしは、物音で我に返った。
気配を感じて、横を振り向きながらたけやりを握りしめると、そこには彼女が立っていた。

「なーんだ。びっくりするじゃないか。」
わたしは緊張を解いて、彼女に話しかけた。

「としこそ、そんなにぼんやりしていると、魔物が近づいても気がつかないわよ。」
焚き火の明かりでぼんやりと光って見える彼女の顔が、にっこりと笑った。

「ああ、つい考え事をしていて…ね。」
わたしは、先ほどの考えが再び去来して、少し暗い声で答えた。

「あら、どうしたの?
としにしては珍しく悩んでいるみたいだけど。」
彼女は、銅の剣を地面に置くと、わたしと背中合わせに座った。

「うん、なんだかよく分からないんだけど、胸の中がもやもやするんだ。」
わたしは曖昧に答えた。

「ふーん、もやもやねぇ。
それは、わたしと二人っきりだから、ドキドキするってことかしら?」
彼女が、やけに楽しげな声で答えた。

「なっ!何言ってるんだよ!
真面目に考え事してるんだからな!」
わたしはドギマギして、思わず大きな声を出してしまった。

「しーっ。
ごめんごめん。珍しく深刻な顔をしてるから、元気づけようとしただけよ。
心のチェックリストのことで悩んでるんでしょ?」
彼女は、軽口を叩いたかと思うと、ズバッと本題に入った。

全く、なんでいつもわたしの気持ちがばれているんだろう。
そんなに単純なのだろうか?
わたしは、(単純なのに)複雑な気持ちで話し始めた。
「習慣化していることは、リスト化しなくてもいいって言っただろ?
となると、一日のうちのほとんどの行動は、習慣化してるんだからリスト化しなくてもいいってことなのかな?
そんなことを考えていると、タスク管理って、本当に必要なのかなって思えてきたんだ。」

わたしが話し終えると、辺りは静かになった。
風がやみ、虫や鳥たちが静まり、魔物さえも息を潜めて、彼女の答えをじっと待っているかのようだった。
ただ、パチパチという、焚き火の音だけが響いた。

しばらくして、彼女の静かな声が聞こえた。
「そうね…。
わたしもそんな風に思ったことがあるわ。
タスク管理なんてしなくても生きていける、と。
でもね、それは真であり偽でもあるの。」

彼女は、ほうっと息を吐いて、少し震えた。
春とはいえ、草原の夜はまだ冷える。
わたしは体を動かして、背中を彼女の背中にくっつけた。
彼女の温もりとともに、緩やかな鼓動が背中越しに伝わってくる。

「確かに、タスク管理をしなくても生きていけるわ。
でもね、あなたが今の自分の生活を変えたいと思うのなら、タスク管理を試してみる価値はあると思うわ。」
彼女は、まるで遠くにいる人に向かって語りかけているようだった。
彼女の視線の先には、いったい誰が写っているのだろう?

彼女は、座ったまま空を見上げ、何かを思い出すように、ゆっくりと話した。
「イヒツワローの錬金術師である、ハーマの書物には、こう書かれてるの。
『タスク管理が必要か否かは、タスク管理の労力に見合うだけの効果があるかどうかが、一つの基準である。
また、楽に生活をするためには、「納得のいく思考停止」が重要である。
そのために「ミッション」を定めたり、「チェックリスト」を作ったり、「マイルール」をたくさん作っていくのである。』
とね。」

わたしは、彼女の言葉の意味を測りかねて、のんびりとした声で応えた。
「えーと、それはどういうことなんだ?」

彼女は、小さい子に言い聞かせるように、ゆっくり説明を始めた。
「ハーマに直接聞いた訳じゃないから、あくまでわたしの解釈だけど、こういうことだと思うの。
タスク管理した方が楽ならすればいいし、タスク管理が負担になるならやめればいい、と。
それと、重要なことに注力するために、重要でないことの負荷を下げる必要がある。そのためのタスク管理だと。」

わたしは、彼女の言葉の意味は理解できたが、やはりもやもやした気持ちになった。
「なるほど、それは大事なことだな。
でも、基準が曖昧だから、悩むんだよ。
例えば、タスク管理が負担かどうかってのは、どう判断すればいいんだ?」

「曖昧なのは、当たり前なのよ。
だって、その人の生活や性格にあった基準なんだもの。
だから、人真似だけじゃなくて、自分で試して、考えて判断するのよ。」
彼女の言葉は次第に熱を帯び、夜の寒さを吹き飛ばすようだった。

「そうか。
そう言われると、曖昧なのも納得がいくな。
それに、試してみないと判らないよな。まずは、色々とやってみるぞ!
そして、そのあとでもう一度考えてみるよ。」
わたしは、彼女の言葉の熱に当てられたのか、体と心が熱くなり、再びやる気が出てきた。

「交代の時間よ。」
その時、リマインダーに吹き込まれた彼女の声が、優しく静かに見張りの交代を告げた。

彼女がスッと体を起こすと背中が離れ、むき出しになったわたしの背中を夜風が撫でていった。
わたしは、先ほどまでの温もりを思い出しながら、冷えた背中に活を入れた。
背中は冷えたけど、心は熱いままだ!

「さあ、交代よ。
としは、もう休んでね。
明日から、また冒険の旅が待ってるわよ。」
彼女は、先ほどとは打って変わって静かな声でそう告げると、見張りをするための準備を始めた。

「気をつけて。
夜は冷えるから、これを使いなよ。」
わたしは、居住用テントから自分の毛布を出し、彼女の背中にそっとかけた。

彼女は無言で頷くと、毛布をしっかりと体に巻き付け、静かに言った。
「お休みなさい。」

「ああ、お休み。」
わたしも静かに答えて、居住用テントに入った。

わたしは居住用テントで横になり、外の物音に耳を澄ませた。
相変わらず、様々な音がわたしの耳を賑わした。
しかし、疲れきった体には心地よい子守歌のように響き、いつしかわたしは暗い眠りの底へと落ちていった。

解説

第十話を読んでくださって、ありがとうございます。

さて、今回としは
「タスク管理」とはなんだろう?
はたして必要なのか?
という、疑問に突き当たります。

それは、なぜか!?
答えは、わたしが何度か突き当たっているからです。

自分でタスク管理を始めたのに、なぜこんなことをしているんだろう?と思うこともあります。
別に、白いモフモフに「ぼくと契約してタスク管理マスターになってよ。」と言われたわけでもないのに…と。

疑問に思う理由の一つが、世の中にたくさんある、タスク管理マスターのお手本です。
タスク管理マスターは、皆素晴らしい手法や理念を構築して、見事なタスク管理を実践されています。
タスク管理を始める時に、それらを参考にして目標にしますが、形だけ真似ると、まず挫折します。

なぜなら、幼なじみの彼女が言ったように
「その人の生活や性格にあった基準なんだもの。みつを。」
だからです。
あれ?セリフがちょっと違うような気が…?

というわけで、先人たちの知恵を拝借しつつ、自分に合うやり方を試行錯誤して、自分なりのタスク管理を見つけるしかないのだろうと思い、今回のお話を書きました。

あ、念のため、誤解のないように書きますが、タスク管理マスターを非難しているわけではありません。
タスク管理マスターは、試行錯誤して積み上げた技を惜しげもなく披露してくださっています。
そこに、感謝こそすれ、非難をする気持ちなど、毛頭ありません。

今回のお話は、はまさん(@Surf_Fish)とのりさん(@norixnori)のつぶやきや、ブログを拝見して、発想を得ました。
ありがとうございます。

お二人のブログはこちら↓です。

はまラボ

くらしすたんと。 | くらし + アシスタント 今日から使えるちいさなくらしのこと

いつも応援してくださるあなたに、心より感謝します。

また、こんないい方法もあるよ、というご意見がありましたら、わたし(@toshi586014)宛にお知らせください。
もちろん、ストーリーに関するご感想も大歓迎です。

それでは、次回またお会いできることを、楽しみにしています。

晴れた日も、曇った日も、素敵な一日をあなたに。

【前回のお話】

タスククエスト ーチェックリスト・おぼえていますかー | はれときどきくもり

【関連する記事】

タスククエスト ータスク管理初心者よ。いざ、わたしと共に冒険の旅へー | はれときどきくもり

タスククエスト ーリマインドを制するものはタスクを制すー | はれときどきくもり

タスククエスト ー記録は記憶よりも強しー | はれときどきくもり

Posted from するぷろ for iPhone.

広告

タスククエスト ーぼくと契約してタスク管理マスターに…?ー」への4件のフィードバック

  1. […] « タスククエスト ーぼくと契約してタスク管理マスターに…?ー 8月 […]

  2. […] タスククエスト ーぼくと契約してタスク管理マスターに…?ー | はれとき… […]

  3. […] タスククエスト ーぼくと契約してタスク管理マスターに…?ー | はれとき… […]

  4. […] タスククエスト ーぼくと契約してタスク管理マスターに…?ー | はれとき… […]

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。